公正証書遺言でも無効になることがある?確実な遺言書を残す方法とは
遺言書は、せっかく作成しても無効となってしまうリスクがあることをご存じでしょうか。記載方法や形式の不備により無効と判断されてしまうこともあるのです。こうしたリスクを避けるには、弁護士によるサポートを受けたり公正証書遺言を選択したりすることが有効ですが、公正証書遺言であっても絶対に大丈夫というわけでもありません。
公正証書遺言とは
公正証書遺言は、公証人という法律の専門家が関与して作成する遺言書です。
次の条件に従い、厳格な手続きのもと、法律の実務家である公証人が筆記します。そのため自筆証書遺言(遺言者1人で作成できる遺言書)と比較して信頼性が高く、無効になりにくいという特徴があります。
《公正証書遺言作成の条件》
- 証人2人以上が立会う
- 遺言を公証人へ口授し、公証人がその内容を筆記する
- 筆記した内容を遺言者および証人に読み聞かせる(または閲覧させる)
- 遺言者および証人が承認し、各自これに署名・押印する
- 公証人が、所定の方式に従い作成された旨を付記して、署名・押印する
また、作成された原本は公証役場で保管されるため、紛失や改ざんを心配する必要もありません。
公正証書遺言が無効になるケース
公正証書遺言は信頼性の高い遺言方式ですが、それでも無効になってしまうケースは存在します。有効性について争いが生じる例は稀ですが、各ケースをチェックして絶対的に安全ということではないと覚えておきましょう。
遺言者の遺言能力が否定された場合
作成には「遺言能力」が必要です。遺言の内容と法的効果を理解し、判断する能力がなければ、作成した遺言書も無効となります。
遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。
遺言能力の有無は以下の点を総合的に考慮して判断されますが、判断が難しい場合もあります。そこで争いになりそうな場合は、医師による診断結果など「作成時点において遺言能力があったと客観的に示せる資料」を備えておくことが重要です。
- 遺言書作成時における精神上の障害の存否、内容、程度
- 遺言内容の複雑性
- 作成の動機や理由、経緯等の諸事情
口授が正しく行われていなかった場合
公正証書遺言では、上記のとおり、遺言者が公証人へ「口授」することが必須です。この口授が適切に行われなかった場合、遺言は無効となる可能性があります。
たとえば「公証人の質問に対し、言語をもって陳述することなく、単に肯定または否定の挙動を示したにすぎないとき」は適切に口授があったものとはいえません。この場合、遺言の内容の複雑さなども踏まえて、無効となる可能性が高いといえるでしょう。
証人が欠格事由に該当する場合
公正証書遺言には2人以上の証人の立会いが求められます。基本的に誰を選定してもかまわないのですが、一部証人としての資格を持てない人物が法律上定められています。
次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。
一 未成年者
二 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
三 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
そのため18歳未満の方や、遺言に強い利害関係を持つ推定相続人等、そして公証人と近しい方を証人としていた場合は、作成した遺言書の効力が失われる可能性が高まります。配偶者や子ども、あるいは子どもの配偶者やその子どもなどを証人として立ち会わせないようにしましょう。
詐欺・脅迫・錯誤があった場合
「第三者からの詐欺や脅迫によって遺言書を作成していた」という事実が発覚した場合、あるいは「重要な事実について錯誤(勘違い)をしていた」という場合、遺言が取り消され効力を失う可能性があります。
そのため、なぜ遺言書を作成しようとしているのか、誰かから促されて作成しようとしていないか、作成の背景にも注意してください。
公序良俗違反がある場合
法律行為全般、公序良俗に反しているときは無効となります。遺言も例外ではなく、そこで記載した内容が社会通念上許容されない内容であるときは有効とはなりません。
どのような内容が公序良俗に反するかは個別の事情によりますが、不当な利益を図って作成されたときには公序良俗違反により無効となる危険性が高まります。
有効な遺言書を残すには
公正証書遺言が無効となる事態を避け、有効な遺言書を確実に残すために、遺言内容を検討する段階から弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
相続手続きや遺言書作成について実績のある弁護士に相談することで種々のリスクを回避しやすくなるでしょう。ご自身が遺言書を使って実現したいことを伝えることで、どのように記載すると良いのか、そして注意点についてもアドバイスを受けることができます。
Staff
資格者紹介

羽鳥 修平Hatori Shuhei / 第二東京弁護士会所属
ご挨拶にかえて
弁護士という仕事は、使命感を持っていそしむべき専門職(プロフェッション)なわけですが、その依頼者(クライアント)の求めにどう対処すべきかについては、二つの異なる考え方が有ると言われています。
ひとつは、「依頼者から具体的な求めがあったら、その求めに真正面から取り組み、そこにポイントを絞って、答えれば良い。それ以上のことをするのは、余計なことであって、弁護士を業とする者の立ち入るべき領域ではない。」という考え方で、もうひとつは、「依頼者から具体的な求めがあっても、それを鵜呑みにすべきではない。依頼者の具体的な求めは、依頼者が抱えている問題を知るための出発点として、注意深く聞くべきだが、そうした聞き取りを通して、依頼者にとって、本当に求めているものは何かを「見つけ出し」、それを依頼者に説明していくというプロセスを通して、依頼者のためにどのような法的サービスを提供すべきか決めるべきだ。」という考え方です。
私は、若い頃から、「見つけ出し」をしようとする癖のようなものがあり、先輩の弁護士から「余計な事をするな、そんなことに首を突っ込むのは弁護士の仕事ではない。」とたしなめられ、腑に落ちない気持ちを持つことが、よくありました。
その後、30年以上がたち、私も、多様なそしてそれなりの数の事案と向き合う機会を持ちました。そうした経験の積み重ねを通して、私は、やはり弁護士たる者、「見つけ出し」から出発することをこそ、重視していかなければならないと、ますます強く考えるようになってきました。
何か問題に直面しているのですか。どうすればよいか、一緒に考えましょう。どうぞ、お気軽にご相談においでください。
- 経歴
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- 昭和28年7月
- 東京都文京区生まれ。
- 昭和51年3月
- 東京大学経済学部を卒業、同大学院経済学研究科に進学。
- 昭和54年10月
- 司法試験に合格。
- 昭和57年3月
- 司法修習を終了。
- 昭和57年4月
- 第二東京弁護士会に登録。
アンダーソン・毛利・ラビノヴィッツ法律事務所に入所。 - 昭和61年1月
- 古田・羽鳥法律事務所に参加。
- 平成3年9月
- 独立して羽鳥法律事務所を開設。
Office Overview
事務所概要
| 名称 | 羽鳥法律事務所 |
|---|---|
| 資格者氏名 | 羽鳥 修平(はとり しゅうへい) |
| 所在地 | 〒113-0033 東京都文京区本郷3-6-9 エルデ本郷館3F |
| 連絡先 | TEL:03-3814-0527/FAX:03-3814-0537 |
| 受付時間 | 10:00~19:00 土日祝も対応可能(要予約) |
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