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遺産相続の手順|手続の方法や必要書類など詳しく解説

相続が開始した時点で一定の財産は相続人のものとなり、複数人の相続人がいるときは共有状態になるものもあります。そのため手続をしなくても財産の所有権を得ることは可能ですが、そのまま放置していたのでは誰が何を所有するのかがはっきりせずその後の管理・運用で問題が生じます。

 

そこで実際のところは、身近な方が亡くなったことを知ってからするべきことがたくさんあります。ここではその全体像が掴めるよう、各種手続の内容を流れに沿って詳しく解説していきます。

 

相続開始直後にしておきたいこと

 

相続が始まったとき、つまり家族など身近な方が亡くなったときから、手続は始まります。

 

葬儀などへの対応に追われているかもしれませんが、並行して「死亡届」の提出もしないといけません。書類を作成して「7日以内」に市区町村役場へ提出してください。

 

また、必須ではありませんが弁護士などの専門家も探し始めると良いです。相続や法律問題に強い専門家がついてくれれば今後の手続についてすべてアドバイスを求めることができますし、弁護士であれば遺産分割をめぐって揉めてしまったときでも上手く交渉を行うことができます。

 

STEP①遺言書の確認

 

相続手続を進めるうえで「遺言書が存在しているかどうか」は重大な問題です。そこでまずはその有無を確定させなくてはなりませんが、遺言書にも次のように種類があって、それぞれに保管方法が異なっています。

 

自筆証書遺言

1人でいつでも作成ができる遺言書。

・保管場所の制限もないため、自宅や貸金庫など、保管場所を見つけるのに苦労する可能性がある。

公正証書遺言

・公証役場で公証人と作成をする遺言書。

・原本は必ず公証役場に保管されるため、公証役場で存在確認が取れる。

秘密証書遺言

・遺言書本文は自分で記載し、その後封をしたものを公証役場に持っていき完成させる。

・保管場所に制限はない。

 

よく利用されているのは公正証書遺言と自筆証書遺言です。前者は公証役場ですぐに確認が取れますが、後者はさまざまな箇所を捜索しないといけません。

 

ただ、近年は法務局で保管する制度もできています。法務局に保管されているものに関しては「遺言書保管事実証明書の交付請求」により存在確認が取れます。法務局で保管されていた場合は、中身をチェックするために「遺言書の閲覧請求」、遺言内容の証明を要するときは「遺言書情報証明書の交付請求」も行います。

 

遺言書保管事実証明書の交付請求

・遺言書が法務局で保管されていないかどうかの確認をするための請求

・相続人や受遺者、遺言執行者などであれば請求可能

・手数料は1通あたり800

遺言書の閲覧請求

・遺言書の内容を見るための手続

・相続人や受遺者、遺言執行者などであれば請求可能

・手数料は11,700円(原本ではなくモニター閲覧の場合は1,400円)

遺言書情報証明書の交付請求

・遺言書内容の証明書を発行してもらう手続

・相続人や受遺者、遺言執行者などであれば請求可能

・手数料は1通あたり1,400

 

家庭裁判所で検認を行う

 

法務局や公証役場で保管されているときは原本が安全に保管されていますが、その他の場所に存在していたときは改ざんなどのリスクにさらされています。そこで封を開ける前に家庭裁判所で「検認」を行うことが次のように法律で求められています。

※検認:遺言書の存在や遺言内容を知らせること、現在の状態を保存して偽造を防ぐこと、などを目的とした手続。

 

遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。

引用:e-Gov法令検索 民法第1004条第1

 

そのため「遺言書を見つけても封を開けない」ということに注意してください。

 

検認を行うには、以下の書類を準備して家庭裁判所に申立を行う必要があります。

 

  • 申立書
  • 遺言者の死亡から出生までの戸籍謄本等
  • 相続人全員の戸籍謄本

 

STEP②法定相続人や遺産を調べる

 

「法定相続人を調べて確定させること」と「遺産の内容を確認して価額の評価を行うこと」も大事です。遺言書の調査と順番が前後しても、同時進行するのでもかまいません。

 

戸籍謄本が必要

 

法定相続人を調査するためにすべきことは「戸籍集め」です。戸籍謄本等(戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍)を市区町村で集めていきましょう。

 

戸籍謄本

現在在籍中の人物全員に関する記載事項を写した書面のこと。

※電子化したものは「全部事項証明書」と呼ぶ。

除籍謄本

戸籍に在籍していた人物がすべて結婚や死亡によっていなくなった除籍簿を写した書面のこと。

※電子化したものは「除かれた戸籍の全部事項証明書」と呼ぶ。

改製原戸籍

改正法の影響を受け、戸籍の編製方法等が変更された場合の、変更前の戸籍のこと。

 

被相続人に家族がおり、まだ同じ戸籍に在籍している方がいるなら「戸籍謄本」。被相続人が亡くなったことですべての人物が除籍されたのなら「除籍謄本」を取得します。その最新の戸籍から遡り、被相続人が生まれたときの戸籍までをすべて集めなくてはなりません。

 

戸籍謄本等の請求をするときは次に掲げるものを準備しておきましょう。

 

  • 交付請求書
  • 運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類
  • 弁護士などに任せるときは委任状
  • 手数料
    • 戸籍謄本なら1通あたり450
    • 除籍謄本や改製原戸籍なら1通あたり750

 

財産別に資料を集める

 

遺産を構成する財産の内容・価額についても把握する必要があります。「何があるのか」が把握できないと遺産分割のしようがありませんし、その際各自の取り分をバランス良くするために「各財産の価額」も把握できていないといけません。

 

いくつか下表で調査方法の例を紹介します。

 

預金の調査方法

・口座を特定するため、通帳やキャッシュカード、その他銀行から届いた通知書などを調べる

・口座が特定できれば残高を確認するため、金融機関に残高証明書の発行請求を行う

・残高証明書の発行には1,000円程度の手数料がかかる

を確認することで、その他の財産の存在が明らかになることもある。

※有価証券についても同様に、まずは取引のあった証券会社を特定し、残高証明書を発行してもらう

不動産の調査方法

・被相続人が所有していた物件を特定するため、登記識別情報通知書を調べる

・名寄帳を取得することで特定の市町村内の物件については把握ができる

・不動産の特定ができれば登記簿謄本を取得して登記情報を確認

・登記簿謄本の取得には1通あたり600円がかかる

借金の調査方法

・金銭消費貸借契約書や貸金業者からの通知書などがないか、被相続人の自宅を調べる

・銀行口座の特定ができているときは取引履歴も要チェック

JICCCICなどの信用情報機関に開示請求をして調べることも可能

・開示請求には1,000円程度の手数料がかかる

 

漏れのないように、網羅的に調べていきましょう。専門家に相談・依頼しておくとこの作業もスムーズに進むでしょう。

 

財産の価額を計算する

 

財産の存在を確認するだけでは不十分です。預金に関しては残高証明書で価額を明らかにできますが、価値の大きさがわかりにくいものもあります。

 

例えば不動産や自動車などの一般動産については価額が付けられていませんので、相続人らで調べる必要があります。

 

また、相続税の計算を行うためにも相続税評価額を把握しなくてはなりません。評価方法も決まっていますので、税理士なども頼りに正しい評価を進めていくと良いでしょう。

 

STEP③相続の承認・放棄の検討

 

遺産の内容を調べたところ、「相続できる資産よりも、負債の方が大きそうだ」と判明するケースもあります。この場合、そのまま相続を受け入れてしまう(これを「単純承認」と呼ぶ。)と、相続によって経済的なリスクを負ったことになってしまいます。

 

そこで相続を受け入れない、「相続放棄」を行うことも検討すべきです。

 

相続放棄をすると相続人ではなくなりますので、資産を取得することもできなくなりますが、借金の支払い義務なども負わなくて済みます。資産だけを取得するといった都合の良い相続方法はありませんので、リスクの方が明らかに大きいのなら相続放棄を行うしかありません。

 

ただ、リスクの大きさを評価するのが難しいときは「限定承認」という道も残っています。これは承継したプラスの財産の範囲に絞って債務の返済義務を負うという仕組みです。債務だけを放棄することはできませんが、過大な負債を負うことを避けることができます。

 

もし相続放棄や限定承認を行う場合は、期限に注意してください。法律では次のように「3ヶ月」という期限を設けています。

 

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

引用:e-Gov法令検索 民法第915

 

この期限を守れなければ、原則として単純承認をしたことになってしまいます。正当な理由があって間に合わないのなら延長してもらうことも可能ですので、家庭裁判所で期間を延長してもらうための手続を採りましょう。

 

STEP④遺産分割協議で遺産を分配

 

相続人にとってもっとも重要な過程が「遺産分割協議」です。

 

相続人全員で参加して行う遺産分割協議では、各々取得する財産について話し合います。

 

基準は法定相続分

 

遺産分割のやり方は基本的に相続人の自由です。遺言書が作成されているときはその内容に従わないといけませんが、参加者全員の合意があれば遺言内容に従わない遺産分割も認められます。

 

そして各相続人の取り分についても参加者の合意があれば自由に調整できますので、「相続人の1人がすべての財産を取得する」と定めることも不可能ではありません。

 

しかし特定の人物だけが恩恵を受けるのは受け入れられない可能性が高いです。そこで公平な遺産分割を目指したいのであれば「法定相続分」を参考にすると良いです。

 

法定相続分とは法律で定められた一応の相続割合であり、遺留分や相続税の計算など、法的な制度においても基準とされる割合です。迷ったときは法定相続分を出発点に話し合いを進めていくとトラブルも避けやすくなります。

 

遺産分割協議書を作成する

 

遺産分割協議がまとまれば、「遺産分割協議書」を作成しましょう。

 

この書面を作成せず口約束で終わらせてしまうと、後々大きな紛争が起こる危険性があります。

 

また、各種財産の名義を変える際にも必要となります。対外的には誰が新しい所有者になったのかがわかりませんので、それを証明するためにも遺産分割協議書は活用されるのです。

 

作成方法に決まったルールはありませんが、次に掲げる情報は盛り込んでおく必要があるでしょう。

 

  • 被相続人の氏名・死亡日・生年月日・本籍地
  • 相続人の氏名・住所
  • 相続人全員の署名・捺印
  • 各相続人が取得する財産の内容
  • 遺産分割協議書を作成した日付

 

遺産分割の適切なやり方、遺産分割協議書の作成なども弁護士に任せることができます。特に揉めやすいポイントですので、専門家の意見もぜひ参考にしてください。万が一意見が対立して裁判沙汰になってしまったとしても、弁護士なら一貫して対処可能です。

Staff

資格者紹介

羽鳥 修平

羽鳥 修平Hatori Shuhei / 第二東京弁護士会所属

ご挨拶にかえて

弁護士という仕事は、使命感を持っていそしむべき専門職(プロフェッション)なわけですが、その依頼者(クライアント)の求めにどう対処すべきかについては、二つの異なる考え方が有ると言われています。

ひとつは、「依頼者から具体的な求めがあったら、その求めに真正面から取り組み、そこにポイントを絞って、答えれば良い。それ以上のことをするのは、余計なことであって、弁護士を業とする者の立ち入るべき領域ではない。」という考え方で、もうひとつは、「依頼者から具体的な求めがあっても、それを鵜呑みにすべきではない。依頼者の具体的な求めは、依頼者が抱えている問題を知るための出発点として、注意深く聞くべきだが、そうした聞き取りを通して、依頼者にとって、本当に求めているものは何かを「見つけ出し」、それを依頼者に説明していくというプロセスを通して、依頼者のためにどのような法的サービスを提供すべきか決めるべきだ。」という考え方です。

私は、若い頃から、「見つけ出し」をしようとする癖のようなものがあり、先輩の弁護士から「余計な事をするな、そんなことに首を突っ込むのは弁護士の仕事ではない。」とたしなめられ、腑に落ちない気持ちを持つことが、よくありました。

その後、30年以上がたち、私も、多様なそしてそれなりの数の事案と向き合う機会を持ちました。そうした経験の積み重ねを通して、私は、やはり弁護士たる者、「見つけ出し」から出発することをこそ、重視していかなければならないと、ますます強く考えるようになってきました。

何か問題に直面しているのですか。どうすればよいか、一緒に考えましょう。どうぞ、お気軽にご相談においでください。

経歴
昭和28年7月
東京都文京区生まれ。
昭和51年3月
東京大学経済学部を卒業、同大学院経済学研究科に進学。
昭和54年10月
司法試験に合格。
昭和57年3月
司法修習を終了。
昭和57年4月
第二東京弁護士会に登録。
アンダーソン・毛利・ラビノヴィッツ法律事務所に入所。
昭和61年1月
古田・羽鳥法律事務所に参加。
平成3年9月
独立して羽鳥法律事務所を開設。

Office Overview

事務所概要

名称 羽鳥法律事務所
資格者氏名 羽鳥 修平(はとり しゅうへい)
所在地 〒113-0033 東京都文京区本郷3-6-9 エルデ本郷館3F
連絡先 TEL:03-3814-0527/FAX:03-3814-0537
受付時間 10:00~19:00 土日祝も対応可能(要予約)
アクセス 東京メトロ丸の内線「本郷3丁目駅」より徒歩6分、「御茶ノ水駅」より徒歩6分
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