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相続人がいないとき遺産はどうなる?相続開始後の流れや財産の行方について

亡くなった方の財産は子どもや配偶者などの相続人へと引き継がれるのが一般的な流れですが、亡くなった時点で相続人が誰もいないケースも存在します。

 

この場合の遺産がどうなるのか、誰が得ることになり、その際の手続きはどのように進行するのか、当記事ではこれらの点を解説していきます。

 

相続人のいない相続が発生するケース

 

遺産を受け取る人がいなくなるケースとしては、「妻や夫、子ども、親、兄弟姉妹がいないなど、そもそも相続人に該当する親族が存在しないケース」と「配偶者や子どもなど相続人はいたが、全員が相続放棄をしたケース」が挙げられます。

 

前者に関しては、孫や姪・甥などが代襲相続して実は相続人がいたというケースも起こり得るため、相続に利害関係を持つ方としてはよく相続人の調査を行う必要があるでしょう。

 

後者に関しては、遺産の多くが負債であるなど相続することがリスクとなる状況が考えられます。

 

このようにそれぞれ状況は異なりますが、いずれにしても遺産の処理に関して一定の手続きが必要となります。

 

相続人がいないことが確定するまでの手続き

 

被相続人の財産を受け取る方がいない場合、後述するように最終的には国庫へと帰属、つまり国のものとなります。

 

しかし、ただちに遺産が国庫に帰属するわけではありません。隠れた相続人やその他遺産に対して権利を行使できる人がいないか考慮し、次のような流れで処理が進められていきます。

 

家庭裁判所への申し立てと相続財産清算人の選任

 

まずは相続人が存在しないことを確定させるため、利害関係人(遺産に関わる権利を持つ可能性のある人)や検察官が、被相続人最後の住所地にある家庭裁判所に「相続財産清算人の選任」を申し立てます。

 

その申し立てにより、家庭裁判所は相続財産清算人を選任し、同時に6ヶ月以上の公告期間を設けて相続人の捜索を行います。

※従来は選任の公告と相続人捜索の公告で複数回公告を行っていたところ、令和54月の法改正を受けこれが統合され、全体の所要期間が短縮されることとなった。

 

この期間内に権利を主張する者が現れなければ、相続人不存在が確定します。

 

公告期間中の相続債権者への対応

 

公告期間が始まると、被相続人が生前に負っていた債務の相手方(銀行からの借入金の相手など)が、相続財産清算人に対して請求を行うことができます。

 

また、遺言によって財産を受け取ることとされていた人(受遺者)がいれば、その方も権利を主張できます。

 

相続財産清算人は、これらの請求をまとめて処理する窓口として機能するのです。

 

遺産は相続財産清算人が清算・処分する

 

家庭裁判所から選任された相続財産清算人は、遺産の管理と清算業務を担当します。

 

業務は多岐にわたり、遺産全体の調査・把握から始まり、相続債権者からの請求に対応し、遺産から債務を弁済していく作業まで含まれます。

 

《 相続財産清算人が対応すること 》

 

  • 遺産の調査と目録作成
  • 相続債権者と受遺者からの請求の受付
  • 公告期間内での債務弁済
  • 特別縁故者への対応 など

 

特別縁故者への財産分与

 

相続債権者への弁済が終わった後も、財産が残っていることがあります。

 

そのような場合には、被相続人と特別な関わりを持っていた人が「特別縁故者」として家庭裁判所に申し立てることで、遺産の一部または全部を受け取れる可能性があります。

 

特別縁故者として認められる可能性のある人は以下のとおりです。

 

  • 被相続人と生計を同じくしていた人(内縁の配偶者、同居していた親戚など)
  • 被相続人の生前に療養看護に当たった人(介護や世話をした知人など)
  • その他被相続人と特別な縁故のあった人

 

ただし、特別縁故者の申し立てには期限があるため主張する方は注意しましょう。相続人捜索の公告期間が満了した後、3ヶ月以内に家庭裁判所へ申し立てなくてはなりません。この期限を過ぎると申し立ての権利は失われます。

 

また、申し立てがあったからといって必ず分与されるわけではなく、家庭裁判所が被相続人との関係や事情を総合的に判断した上で、分与の有無と金額を決定します。

 

さらに、遺産を受け取ったときは相続税が発生する可能性がありますので、申告や納付の手続きにも留意しましょう。

 

最後には国庫へ帰属

 

特別縁故者への分与後も残余財産があるなら、その全部は国庫へ帰属します。

※共有不動産の持分については、ほかの共有者に帰属する。

 

国庫に帰属した後は、原則として民間人が請求することはできません。

 

裁判所への申し立てが必要なら弁護士に相談

 

債権者として申し立てたい場合、あるいは特別縁故者として認めてもらい財産分与を求める場合などには、弁護士をご利用いただければと思います。

 

要求が受け入れられそうかどうかのアドバイス、権利を主張するための手続きのことなど、広くサポートすることが可能です。

 

相続では期限が設けられている手続きも多いですし、気づいた段階での相談をおすすめします。

Staff

資格者紹介

羽鳥 修平

羽鳥 修平Hatori Shuhei / 第二東京弁護士会所属

ご挨拶にかえて

弁護士という仕事は、使命感を持っていそしむべき専門職(プロフェッション)なわけですが、その依頼者(クライアント)の求めにどう対処すべきかについては、二つの異なる考え方が有ると言われています。

ひとつは、「依頼者から具体的な求めがあったら、その求めに真正面から取り組み、そこにポイントを絞って、答えれば良い。それ以上のことをするのは、余計なことであって、弁護士を業とする者の立ち入るべき領域ではない。」という考え方で、もうひとつは、「依頼者から具体的な求めがあっても、それを鵜呑みにすべきではない。依頼者の具体的な求めは、依頼者が抱えている問題を知るための出発点として、注意深く聞くべきだが、そうした聞き取りを通して、依頼者にとって、本当に求めているものは何かを「見つけ出し」、それを依頼者に説明していくというプロセスを通して、依頼者のためにどのような法的サービスを提供すべきか決めるべきだ。」という考え方です。

私は、若い頃から、「見つけ出し」をしようとする癖のようなものがあり、先輩の弁護士から「余計な事をするな、そんなことに首を突っ込むのは弁護士の仕事ではない。」とたしなめられ、腑に落ちない気持ちを持つことが、よくありました。

その後、30年以上がたち、私も、多様なそしてそれなりの数の事案と向き合う機会を持ちました。そうした経験の積み重ねを通して、私は、やはり弁護士たる者、「見つけ出し」から出発することをこそ、重視していかなければならないと、ますます強く考えるようになってきました。

何か問題に直面しているのですか。どうすればよいか、一緒に考えましょう。どうぞ、お気軽にご相談においでください。

経歴
昭和28年7月
東京都文京区生まれ。
昭和51年3月
東京大学経済学部を卒業、同大学院経済学研究科に進学。
昭和54年10月
司法試験に合格。
昭和57年3月
司法修習を終了。
昭和57年4月
第二東京弁護士会に登録。
アンダーソン・毛利・ラビノヴィッツ法律事務所に入所。
昭和61年1月
古田・羽鳥法律事務所に参加。
平成3年9月
独立して羽鳥法律事務所を開設。

Office Overview

事務所概要

名称 羽鳥法律事務所
資格者氏名 羽鳥 修平(はとり しゅうへい)
所在地 〒113-0033 東京都文京区本郷3-6-9 エルデ本郷館3F
連絡先 TEL:03-3814-0527/FAX:03-3814-0537
受付時間 10:00~19:00 土日祝も対応可能(要予約)
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