後継者への事業承継~手法ごとの特徴と確認すべき注意点を解説~
後継者に会社を引き継いでもらう方法はいくつかあります。誰を後継者にするかによって具体的な手続き内容や注意点が大きく異なりますので、それぞれ把握の上、比較検討すると良いでしょう。
事業承継一般でチェックしておきたいポイント
事業承継として引き継がれるものは、経営権・財産・取引先との関係・従業員・経営理念など多岐にわたります。
個人事業主の場合は権利義務が経営者個人に帰属しているため、許認可の再取得から雇用関係、取引先との契約関係など、個別の手続きが多く必要となります。
一方、株式会社のような法人では経営者個人と法人が別個の存在であることから、原則として契約関係一つひとつを移す必要はありません。株式会社であれば、経営権の移転は主に自社株式の承継によってまとめて行われます。
ただ、事業承継に取り組むにあたって以下の点は押さえておきましょう。
代表取締役交代に伴う手続き
株式会社において後継者が経営を引き継ぐには、①自社株式の移転と②代表取締役の交代という2つの大きな手続きが必要とされます。
代表取締役の変更は株主総会や取締役会の決議を経て行い、変更があった日から2週間以内に法務局への変更登記申請を行わなければなりません。期限超過すると過料を科されるおそれがありますので、スケジュール管理に気を付けましょう。
株式承継に伴う税負担
事業承継の場面で株式を移転する方法としては、贈与・相続・売買による移転が典型的です。
このとき、それぞれ贈与税・相続税・譲渡所得税等の課税関係が生じます。評価額が高く算定される会社だと税金の負担が承継の障壁となってしまうこともありますので、税理士に試算してもらうなどして状況把握や対策を講ずると良いでしょう。
相続させる場合の備え
「現経営者が亡くなるまで経営権を保持し続け、相続を契機に後継者へ承継する」ということも可能です。
ただし遺言書を作るなどして備えておかないと、株式が複数の相続人に分散するおそれがあります。遺産分割で法定相続分通りに株式を取得し、各々が経営権を持ってしまうと、議決権をめぐる対立が生じて経営が機能しなくなるかもしれません。
そこで特定の方に集中的に取得してもらうよう遺言を残したり、場合によっては定款に相続人への売渡請求の規定を設けたりするなど、分散防止の措置も検討する必要があるでしょう。
個人保証(経営者保証)の問題
現経営者が金融機関と交わしている個人保証が後継者の大きな負担となり、承継の意欲を削ぐこともあります。
その問題が生じそうなケースでは、「経営者保証に関するガイドライン」を踏まえて金融機関と事前に協議し、保証の見直しや解消を検討してもらいましょう。
各手法の特徴と注意点
後継者の選び方に対応して、手法は以下の大きく3つに分かれます。それぞれの特徴と注意点を見ていきましょう。
親族内承継
親族内承継は、子や親族を後継者とする手法です。
一般的に、経営理念や企業文化を引き継ぎやすく、長期間をかけて後継者を育成できることが強みとされます。取引先や従業員の理解を得やすい特徴もあります。
ただし、特定の後継者への株式集中によってほかの相続人との遺留分トラブルが生じやすいです。遺言書の作成だけでは遺留分問題を回避できないため、推定相続人全員の合意のもとで自社株式を遺留分の算定から除外するなど、予防策を打っておくことが推奨されます。
従業員・役員承継
社内の役員や幹部従業員への承継であれば、経営の実態をよく知る人物が引き継ぐことになるため、親族外承継の中ではスムーズに進めやすいです。また、取引先やほかの従業員からの信頼も比較的得やすいのも特徴です。
ただし、経営権を買い取るための「後継者候補の資金調達の目処が立つかどうか」という問題があります。
また、後継者以外の役員や株主の理解を事前に得ておかないと、後になって「社内で対立が生じるリスク」もあり、社内の意思統一を丁寧に進めることが欠かせません。
第三者承継(M&A)
M&A等による第三者承継は、社外の企業や個人へ株式を譲渡する手法です。
親族にも社内にも適任者がいない場合などで検討することが多く、後継者が不在でも事業と雇用を継続できますし、現経営者が売却益を得られるというメリットがあります。
一方で、買い手の選定や条件交渉に加え、通常は財務・法務などのデューデリジェンスが行われるため、一定の時間と専門家費用がかかることは念頭に置いておく必要があります。承継後に経営方針や企業文化が変わることも考えられますので、従業員や取引先への説明も大切です。
弁護士に相談できること
事業承継では法務・税務・経営の問題が複雑に絡み合います。そのため、どの手法を選ぶ場合でも法律の専門家の関与が成功率に関わってきます。
たとえば、有効な遺言書の作成、遺留分対策のための合意書作成、M&Aにおける株式譲渡契約書の精査や保証条項の整備、個人保証の解消に向けた金融機関との交渉、株式の分散防止を目的とした定款変更など多くのシーンで高い法的専門性が必要になるでしょう。
問題が表面化してからの相談でも有効ですが、承継の意思が固まった段階で早めに相談することが、より効果的で円滑な事業承継につながります。
Staff
資格者紹介

羽鳥 修平Hatori Shuhei / 第二東京弁護士会所属
ご挨拶にかえて
弁護士という仕事は、使命感を持っていそしむべき専門職(プロフェッション)なわけですが、その依頼者(クライアント)の求めにどう対処すべきかについては、二つの異なる考え方が有ると言われています。
ひとつは、「依頼者から具体的な求めがあったら、その求めに真正面から取り組み、そこにポイントを絞って、答えれば良い。それ以上のことをするのは、余計なことであって、弁護士を業とする者の立ち入るべき領域ではない。」という考え方で、もうひとつは、「依頼者から具体的な求めがあっても、それを鵜呑みにすべきではない。依頼者の具体的な求めは、依頼者が抱えている問題を知るための出発点として、注意深く聞くべきだが、そうした聞き取りを通して、依頼者にとって、本当に求めているものは何かを「見つけ出し」、それを依頼者に説明していくというプロセスを通して、依頼者のためにどのような法的サービスを提供すべきか決めるべきだ。」という考え方です。
私は、若い頃から、「見つけ出し」をしようとする癖のようなものがあり、先輩の弁護士から「余計な事をするな、そんなことに首を突っ込むのは弁護士の仕事ではない。」とたしなめられ、腑に落ちない気持ちを持つことが、よくありました。
その後、30年以上がたち、私も、多様なそしてそれなりの数の事案と向き合う機会を持ちました。そうした経験の積み重ねを通して、私は、やはり弁護士たる者、「見つけ出し」から出発することをこそ、重視していかなければならないと、ますます強く考えるようになってきました。
何か問題に直面しているのですか。どうすればよいか、一緒に考えましょう。どうぞ、お気軽にご相談においでください。
- 経歴
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- 昭和28年7月
- 東京都文京区生まれ。
- 昭和51年3月
- 東京大学経済学部を卒業、同大学院経済学研究科に進学。
- 昭和54年10月
- 司法試験に合格。
- 昭和57年3月
- 司法修習を終了。
- 昭和57年4月
- 第二東京弁護士会に登録。
アンダーソン・毛利・ラビノヴィッツ法律事務所に入所。 - 昭和61年1月
- 古田・羽鳥法律事務所に参加。
- 平成3年9月
- 独立して羽鳥法律事務所を開設。
Office Overview
事務所概要
| 名称 | 羽鳥法律事務所 |
|---|---|
| 資格者氏名 | 羽鳥 修平(はとり しゅうへい) |
| 所在地 | 〒113-0033 東京都文京区本郷3-6-9 エルデ本郷館3F |
| 連絡先 | TEL:03-3814-0527/FAX:03-3814-0537 |
| 受付時間 | 10:00~19:00 土日祝も対応可能(要予約) |
| アクセス | 東京メトロ丸の内線「本郷3丁目駅」より徒歩6分、「御茶ノ水駅」より徒歩6分 JR線「御茶ノ水駅」より徒歩8分 都営大江戸線「本郷3丁目駅」より徒歩6分 東京メトロ千代田線「新御茶ノ水駅」より徒歩10分 都営地下鉄三田線「水道橋駅」より徒歩11分 |

