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不動産を購入する事業者が注意すべきポイントを解説

不動産売買は事業者であっても頻繁に行うものではありません。全国規模でビジネスを展開していれば不動産を取り扱う機会も多くなりますが、中小企業だと個人として自宅を購入するときのように不動産売買も一度きり、ということも珍しくありません。そうでなくとも、日常的に行う取引に比べて高額なやり取りが発生しますし慎重にならなくてはなりません。

 

そこで当記事では不動産を購入する場面でチェックしておきたい大事なポイントをまとめました。ぜひ参考にしてください。

 

物件について調査すべきポイント

 

購入する物件については、以下の点を意識して調査しておきましょう。

 

  • アクセスの良さ
  • 現地での確認
  • 災害のリスク
  • 権利関係
  • 法令上の制限
  • 取引価格の相場

 

思わぬリスクが潜んでいる可能性がありますので、事前にしっかりと調査を進めておきましょう。

 

アクセスの良さ

 

事業で使う物件を選ぶ際、「立地」は非常に重要な要素です。立地条件が良い物件には高い集客力が期待できますし、さまざまなメリットをもたらします。そこで以下の点を意識しつつ物件選びに取り組みましょう。

 

  • 事業内容との相性
    • 小売業や飲食業なら人通りの多い駅前や商店街、商業施設内などが適している。
    • オフィスなら交通アクセスが良い場所、ビジネス街に近い場所が好まれる。
    • 工場・倉庫なら高速道路に近く、広い敷地を確保できる郊外が適している。
  • 顧客層との相性
    • 若者向けなら駅前や繁華街などが適している。
    • ファミリー層向けなら学校やスーパー、住宅街の近くなどが適している。
    • 富裕層向けなら高級住宅街やブランドショップが集まるエリアを選ぶと良い。
  • 競合店の状況
    • 競合店が少ないエリアだと独占的なポジションにつける可能性があるが、需要が小さい可能性もある。潜在的な需要を調査して競合の少ない場所を探すと効果的。
  • 将来性
    • 周辺地域で再開発計画がある場合は将来的な発展が見込める。
    • 人口が増加傾向にあるエリアだと今後需要が増す可能性が高い。

 

ただし、これらはあくまで一般論ですので「自社にとって最適な立地」を評価することが大事です。この評価には多角的な知見を要しますので、不動産会社や専門家に相談してアドバイスを受けることが有効です。

 

現地での確認

 

良い物件を見つけたときは、文字情報のみで確認を終わらせるのではなく、実際に現地で確認を行いましょう。

 

位置や形状、広さなど状態を調査しておくことがとても大事です。実際に見てみることで、「登記簿上の表示より狭い」と判明するケースもあるのです。契約後にこのような事実に気付いてトラブルになることもありますので、できれば測量士、土地家屋調査士にも実測してもらいましょう。

 

建物に関しては時間帯などを変えて複数回内見を実施すべきです。昼間と夜間で周辺の雰囲気は異なりますし、日当たりの悪さに気が付くこともあります。また、晴れの日と雨の日の両方を確認しておくことも大切です。

 

店舗を構えるのであれば、平日と休日とでどれだけ人通りの多さが違うのかも見ておきましょう。

 

自然災害のリスク

 

日本では地震が起こりやすいですし、津波や土砂崩れ、洪水などのリスクも考慮しておくべきです。

 

中古の建物に関しては、少なくとも「耐震性」の確認をしておきましょう。耐震基準は年代によって異なり、例えば2000年以降に建てられた物件かどうかによって適用される基準が違っています。

 

また、その耐震基準を基に「耐震等級」という指標も設けられています。

 

耐震等級1

・最低限守らないといけない「耐震基準」と同等の内容

・耐震の水準は次のように表現される

「震度6強~7相当の地震に対して倒壊や崩壊を起こさない」

「震度5強の地震に対して損傷を生じない」

耐震等級2

・避難所として使われる施設はクリアしないといけない水準

・耐震等級1の1.25倍の耐震性を表す

耐震等級3

・消防署や警察署など特定の施設でクリアするよう設計されている

・耐震等級1の1.5倍の耐震性を表す

 

 

建物の強さをチェックするだけでなく、そのエリアが元々抱えている地理上の災害リスクも確認しておくべきです。これは政府が運用しているハザードマップから確認が可能です。

 

「ハザードマップポータルサイト 国土地理院」

https://disaportal.gsi.go.jp/

 

住所・現在地・地図などから探すことができます。さまざまな災害についてのリスクを把握でき、各種ハザードマップを重ねて表示するなど、総合的な災害リスクを評価することも同サイトから可能です。

 

権利関係

 

不動産に地上権や永小作権、賃借権などが付いていると、それを購入した買主も自由に扱うことができなくなってしまいます。担保権にあたる抵当権や質権などが付いている場合もリスクが大きいです。

 

そこで成約前に必ず権利関係についても確認を済ませておきましょう。売主が所有権を持っていることももちろん見ておかないといけません。

 

権利関係は登記簿からチェックします。

※登記簿への記載があっても保証がされているわけではない。登記の内容が間違っていると本来の権利者との間でトラブルも起こり得る。そのためより正確を期するなら、過去の取引情報なども調査し、登記が間違っていないことの確認を取る必要がある。

 

法令上の制限

 

場所によって使用上の制限が設けられていることがあります。どのような目的で土地を使うのか、また、建設する建物の面積や高さ、構造なども法令によって規制されています。不動産会社を介した取引であればこの点の説明も受けますが、後になって重大な事実が発覚しては大変ですので、買主自身でも市区町村等に問い合わせて調査を進めておくべきです。

 

また業種によっては許認可等にも意識を向ける必要があります。一定以上の面積を設けること、特定の部屋を設けることなど、室内環境について指定されているケースもあります。その要件をクリアできるような土地や建物を用意しないといけません。

 

取引価格の相場

 

大きなコストがかかる取引ですし、提示された価格をそのまま受け入れるのではなく、一度それが適正な値かどうか評価しましょう。

 

評価は簡単ではありませんが、「公示価格」「基準地価」「路線価」「固定資産評価額」「取引事例価格」などを参考すると相場も見えてきます。

 

※公示価格:土地鑑定委員会が地価公示法に基づいて毎年決定する、11日時点における土地の価格

※基準地価:都道府県が国土利用計画法に基づいて毎年決定する、71日時点における土地の価格

※路線価:相続税等を算定する根拠として使われる土地の価格。

※固定資産税評価額:固定資産税を算定する根拠として使われる価格

※取引事例価格:近隣で過去に取引されたときの価格

 

契約書の確認で注意すべきポイント

 

購入する物件が定まれば不動産会社、あるいは所有者と不動産売買契約を交わすことになります。その際のルールは契約書にすべてまとめられます。口約束で交わした内容もきちんと反映されているかどうか、一言一句確認していかないといけません。特に以下のポイントは注視しておきましょう。

 

  • 物件の表示
  • 売買代金と支払条件
  • 手付金
  • 契約不適合責任

 

どのように注意すべきか、それぞれ解説します。

 

物件の表示

 

不動産売買契約書には、目的物となる物件の情報ももちろん記載します。相手方が作成した契約書をチェックする場合、必ず「物件の表示」が正しいことの確認を行いましょう。

 

土地については地番や地目、地積。建物については家屋番号や構造、床面積などを一つひとつ、登記簿上の情報と照らし合わせながら見ていきます。

 

売買代金と支払条件

 

売買代金や支払条件について、それまでに話してきた内容とずれがないことを確認しましょう。融資を受けて購入する場合は、審査が通らなかったときの対処についても記載されていることをチェックします。

 

手付金

 

通常、不動産売買の場面では引渡しに先立って手付金を交付します。この手付金に関するルールも要チェックです。

 

買主がもし解約をするならその手付金は放棄しないといけませんし、売主が解約をしたいときは手付金の倍額を買主に償還しないといけません。重大な契約ですので、解約を簡単にされてしまわないよう、手付金のやり取りを行うのです。

 

なお手付金の相場は売買代金の1割程度です。

 

契約不適合責任

 

「契約不適合責任」とは、目的物が契約通りのものではなかったときの売主の責任、を意味します。もし引き渡された物件が約束した通りのものでなかったときは、売主に対して契約不適合責任を根拠に損害賠償請求等を行うこととなります。

 

不動産の修補や代金の減額によって対応できるケースなら、修補や減額によります。

場合によっては契約の解除も認められます。

 

原則として、「買主が不適合を知ったときから1年以内」に通知をすれば契約不適合責任を追及できます。ただし契約にて特則が設けられていることもありますので、その内容には注意してください。

 

そしてなにより、後になって契約不適合が見つかる事態を回避することが大事です。不動産が引き渡される前には専門家も頼りに、不備の有無をよく調査しておきましょう。

 

不動産会社の選定も重要

 

不動産取引をめぐるトラブルを回避するうえで「物件をよく調べること」や「契約書の内容をよく確認しておくこと」はとても大事ですが、これらに並ぶ重要な視点が「不動産会社の選び方」です。

 

優良な不動産会社が相手であれば自社による調査に多少の漏れがあっても問題は起こりにくいですし、法外な取引金額・手付金・仲介手数料などを設定したり一方的に不利な条件を押し付けてきたりするリスクも少なくなります。

 

また、悪質な不動産会社ではなくても、仲介手数料やサービスの質には差があります。不動産会社の評価は簡単ではありませんが、「複数社に相談すること」で比較検討は可能です。

 

どこも同じ、と考えず不動産会社選びにも慎重に取り組むようにしましょう。

 

直接取引は特に注意が必要

 

不動産取引において仲介は必須ではありません。不動産の所有者と直接取引を行うことも可能です。そうすることで仲介手数料が発生しなくなり、必要な費用も少なくできるでしょう。

 

ただ、「仲介手数料を払ってでも専門の業者を挟んだ方が無難」という認識は持っておくべきです。不動産取引には法的な問題も多く絡んできますし、よほど双方が不動産取引に慣れていない限り、トラブルが起こるリスクが高くなってしまいます。

 

仲介を行う不動産会社には、大事な事項を伝えないといけない義務などが課されており、不動産取引の安全性がある程度担保されるよう法律で規制されているのです。このような規制が機能しない直接取引では思い違いも起こりやすいため、特に注意しないといけません。

Staff

資格者紹介

羽鳥 修平

羽鳥 修平Hatori Shuhei / 第二東京弁護士会所属

ご挨拶にかえて

弁護士という仕事は、使命感を持っていそしむべき専門職(プロフェッション)なわけですが、その依頼者(クライアント)の求めにどう対処すべきかについては、二つの異なる考え方が有ると言われています。

ひとつは、「依頼者から具体的な求めがあったら、その求めに真正面から取り組み、そこにポイントを絞って、答えれば良い。それ以上のことをするのは、余計なことであって、弁護士を業とする者の立ち入るべき領域ではない。」という考え方で、もうひとつは、「依頼者から具体的な求めがあっても、それを鵜呑みにすべきではない。依頼者の具体的な求めは、依頼者が抱えている問題を知るための出発点として、注意深く聞くべきだが、そうした聞き取りを通して、依頼者にとって、本当に求めているものは何かを「見つけ出し」、それを依頼者に説明していくというプロセスを通して、依頼者のためにどのような法的サービスを提供すべきか決めるべきだ。」という考え方です。

私は、若い頃から、「見つけ出し」をしようとする癖のようなものがあり、先輩の弁護士から「余計な事をするな、そんなことに首を突っ込むのは弁護士の仕事ではない。」とたしなめられ、腑に落ちない気持ちを持つことが、よくありました。

その後、30年以上がたち、私も、多様なそしてそれなりの数の事案と向き合う機会を持ちました。そうした経験の積み重ねを通して、私は、やはり弁護士たる者、「見つけ出し」から出発することをこそ、重視していかなければならないと、ますます強く考えるようになってきました。

何か問題に直面しているのですか。どうすればよいか、一緒に考えましょう。どうぞ、お気軽にご相談においでください。

経歴
昭和28年7月
東京都文京区生まれ。
昭和51年3月
東京大学経済学部を卒業、同大学院経済学研究科に進学。
昭和54年10月
司法試験に合格。
昭和57年3月
司法修習を終了。
昭和57年4月
第二東京弁護士会に登録。
アンダーソン・毛利・ラビノヴィッツ法律事務所に入所。
昭和61年1月
古田・羽鳥法律事務所に参加。
平成3年9月
独立して羽鳥法律事務所を開設。

Office Overview

事務所概要

名称 羽鳥法律事務所
資格者氏名 羽鳥 修平(はとり しゅうへい)
所在地 〒113-0033 東京都文京区本郷3-6-9 エルデ本郷館3F
連絡先 TEL:03-3814-0527/FAX:03-3814-0537
受付時間 10:00~19:00 土日祝も対応可能(要予約)
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