上場に向けて必要な準備~会社が行うべき整備のポイントをわかりやすく解説~
株式上場(IPO)は、会社の信頼性や資金調達力の大幅な向上が期待できる反面、準備に数年を要する大がかりなプロジェクトです。計画的な取り組みが重要となってくるため、上場を目指す会社として整備すべきことを整理しておきましょう。
上場審査で何を見られる?
証券取引所に上場するため上場審査をクリアしなければなりません。審査には大きく「形式基準」と「実質基準」の2つがあり、それぞれ次のような違いがあります。
- 形式基準・・・株主数や発行株式数、純資産額、利益額など数字で確認できる条件。要件が明瞭で判断がしやすい反面、一定の数字をクリアできなければ申請すらできない。
- 実質基準・・・数字では測れない、「企業として継続的に成長できそうか」「情報開示(ディスクロージャー)が適切か」「内部管理体制が整っているか」などを評価する。
つまり、帳簿上の数字が良くても会社の管理体制がずさんであれば実質基準を満たせず上場は認められないということです。
上場に向けて整えておくべき体制
実質基準を満たすためにも、上場に向けて次の点を意識して体制を整えておきましょう。
- コーポレートガバナンスの仕組み作り
- 内部統制の強化
- 財務・会計体制の整備
- 労務管理体制の整備
- 資本政策の設計・運用体制
整備には期間を要しますので、少なくとも申請の2~3年ほど前には取り組みはじめることが望ましいです。各ポイントをご確認ください。
①コーポレートガバナンスの仕組み作り
上場企業は多くの株主や投資家に対して説明責任を負います。そのため経営の透明性を確保するため「コーポレートガバナンス(企業統治)」の整備が欠かせません。
透明性確保の観点からは、次の体制構築等が重要といえるでしょう。
- 取締役会について、ただ形式的な開催ではなく、独立した立場の社外取締役を迎えて実質的な議論が行われる環境を備えること
- 監査役(会)または監査等委員会の設置により、経営執行を監督する独立した機能を持たせること
- 内部通報制度の設置により、社内の不正を早期に発見・是正できる仕組みを持つこと など
スタートアップでは社長がすべての決定権を握っているケースも多いですが、上場に向けてはその構造を変えていくことが課題の一つになります。
②内部統制の強化
上場企業には「財務報告の信頼性」を担保するための内部統制が求められます。
たとえば「誰がどの権限で経費を承認するか」「売上の計上基準はどう定めているか」「在庫管理はどのように行っているか」といったことを明文化するとともに、当該ルールと実際の運用が一致するよう整備しておく必要があります。
上場後は、これらの整備状況を毎年開示することも義務付けられます。そのため上場準備の段階から実際に機能する体制を築いておきましょう。
③財務・会計体制の整備
上場申請には直前2〜3期分の監査済財務諸表を用意する必要があることから、監査法人による監査を受けられる経理体制を整えておきます。
この観点から留意すべき点はこちらです。
- 月次決算を後回しにせず早期に実施する
- 収益や費用計上のルールを明文化する
- 関連当事者(オーナーとの取引など)の適切な管理と開示
特に創業期から個人事業的な感覚で運営してきた会社では要注意です。オーナーと会社のお金の区別が曖昧になっていると上場審査のクリアは難しいです。
④労務管理体制の整備
上場審査では労務管理の適法性も重要なチェック項目の一つです。未払い残業代の有無、36協定の締結・届出状況、就業規則などが確認されます。
上場前に労務上の問題が発覚すると、是正に時間とコストがかかるだけでなく、審査自体が遅延するリスクもあります。上場準備に入る段階で一度、労働関係の法令遵守状況をチェックしておくことが望ましいです。
⑤資本政策の設計・運用体制
資本政策とは、「上場までに誰がどれだけの株を持つか」「投資家や従業員向けにどのくらい株式を発行するか」などの設計を意味します。
一度決めた株主構成や株式の発行条件は後から変更しにくく、上場後の経営権にも影響します。たとえば、ストックオプション(従業員に将来の株式購入権を付与する制度)をどのタイミングでどの規模で発行するかは、税制上の要件とも絡み、慎重な判断が必要です。
弁護士のほか、税理士などとも協力しながら資本政策の策定に取り組みましょう。
専門家との連携が効率的かつ効果的
上場準備を自社のみで完結させるのは困難です。一般的にも、複数の専門家が関与し、連携しながら進めていきます。
それぞれの役割は次のとおりです。
- 弁護士:上場申請書類のチェック、ガバナンス体制の設計、労務や契約の整備支援等
- 公認会計士(監査法人):財務諸表の信頼性を担保するための監査の実施
- 税理士:税務サポート、各種税制の活用支援
- 社会保険労務士:就業規則・労働管理体制の整備をサポート
法律事務所は、ガバナンス体制の構築、定款や各種規程の整備、ストックオプションの設計、取引先との契約管理など上場準備の中でも法的側面から包括的に関与が可能な専門家です。
ご相談は上場準備が本格化する前段階からでもかまいません。早めに法律事務所へ相談することが、後日「この体制では審査が通らない」と判明するリスクを減らすことにつながります。
Staff
資格者紹介

羽鳥 修平Hatori Shuhei / 第二東京弁護士会所属
ご挨拶にかえて
弁護士という仕事は、使命感を持っていそしむべき専門職(プロフェッション)なわけですが、その依頼者(クライアント)の求めにどう対処すべきかについては、二つの異なる考え方が有ると言われています。
ひとつは、「依頼者から具体的な求めがあったら、その求めに真正面から取り組み、そこにポイントを絞って、答えれば良い。それ以上のことをするのは、余計なことであって、弁護士を業とする者の立ち入るべき領域ではない。」という考え方で、もうひとつは、「依頼者から具体的な求めがあっても、それを鵜呑みにすべきではない。依頼者の具体的な求めは、依頼者が抱えている問題を知るための出発点として、注意深く聞くべきだが、そうした聞き取りを通して、依頼者にとって、本当に求めているものは何かを「見つけ出し」、それを依頼者に説明していくというプロセスを通して、依頼者のためにどのような法的サービスを提供すべきか決めるべきだ。」という考え方です。
私は、若い頃から、「見つけ出し」をしようとする癖のようなものがあり、先輩の弁護士から「余計な事をするな、そんなことに首を突っ込むのは弁護士の仕事ではない。」とたしなめられ、腑に落ちない気持ちを持つことが、よくありました。
その後、30年以上がたち、私も、多様なそしてそれなりの数の事案と向き合う機会を持ちました。そうした経験の積み重ねを通して、私は、やはり弁護士たる者、「見つけ出し」から出発することをこそ、重視していかなければならないと、ますます強く考えるようになってきました。
何か問題に直面しているのですか。どうすればよいか、一緒に考えましょう。どうぞ、お気軽にご相談においでください。
- 経歴
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- 昭和28年7月
- 東京都文京区生まれ。
- 昭和51年3月
- 東京大学経済学部を卒業、同大学院経済学研究科に進学。
- 昭和54年10月
- 司法試験に合格。
- 昭和57年3月
- 司法修習を終了。
- 昭和57年4月
- 第二東京弁護士会に登録。
アンダーソン・毛利・ラビノヴィッツ法律事務所に入所。 - 昭和61年1月
- 古田・羽鳥法律事務所に参加。
- 平成3年9月
- 独立して羽鳥法律事務所を開設。
Office Overview
事務所概要
| 名称 | 羽鳥法律事務所 |
|---|---|
| 資格者氏名 | 羽鳥 修平(はとり しゅうへい) |
| 所在地 | 〒113-0033 東京都文京区本郷3-6-9 エルデ本郷館3F |
| 連絡先 | TEL:03-3814-0527/FAX:03-3814-0537 |
| 受付時間 | 10:00~19:00 土日祝も対応可能(要予約) |
| アクセス | 東京メトロ丸の内線「本郷3丁目駅」より徒歩6分、「御茶ノ水駅」より徒歩6分 JR線「御茶ノ水駅」より徒歩8分 都営大江戸線「本郷3丁目駅」より徒歩6分 東京メトロ千代田線「新御茶ノ水駅」より徒歩10分 都営地下鉄三田線「水道橋駅」より徒歩11分 |

