遺産調査を専門家に頼まず自分で行う場合のメリットとデメリット
遺産相続に対してやらないといけない作業はたくさんあります。そのうちの1つが「遺産調査」です。被相続人がどのような財産を持っていたのか漏れなく調べる必要があり、この作業ができていないと遺産分割協議や相続税申告などの手続きが適切に進められません。
そこで専門家に依頼して遺産調査を行うケースが多いのですが、依頼が法的義務というわけではありません。相続人自身で行うことにもメリットはありますので、デメリットとも比較しながらどのように対処していくのか検討すると良いでしょう。
自分で調査する主なメリットは「費用の節約」
遺産調査を専門家に依頼すると費用がかかります。
案件の複雑さや財産の種類・数によって費用は変動するものの、少なくとも数万円以上、複雑な案件では30万円程度かかることもあります。一方、自分で遺産調査を行うことでこうした専門家への報酬を節約することができますので、この点が自分で対応する一番のメリットといえるでしょう。
ただし、注意しておきたいのは書類の取得費用や各種手数料などの実費については、専門家に依頼する場合でも自分で行う場合でも同様に発生するという点です。
たとえば、戸籍謄本の取得費用や口座の残高証明書の発行手数料などはいずれにしろ負担が発生します。
その他のメリット
費用が節約できるほか、相続人によっては次のようなメリットも得られるでしょう。
自分で調査するメリット | 詳細 |
|---|---|
自分のペースで進めることができる | 専門家に依頼する場合、まず専門家探しから始まり、打ち合わせの日程調整や資料提出などのやり取りが発生する。自分で調査を行えば、自分の都合に合わせて作業を進められるため、仕事や家事などの合間に少しずつ進めることも可能。専門家とのコミュニケーションに時間を取られることもない。 |
デリケートな家族関係や財産状況を話さずにすむ | 相続に関する事柄は、家族間の複雑な関係や感情が絡むことも少なくない。身内のことや財産状況を人に話したくない方からすると事細かに話すことに抵抗を感じることもある。この点、自分ですべて対応するなら家族間の問題なども話す必要がなくなる。 |
財産管理の経験になる | 遺産調査を通じて、銀行や証券会社、その他企業などさまざまな相手方とのやり取り、手続きを行うことになる。手間はかかるが金融リテラシーや相続に対する知識を身につける機会にもなる。 |
自分で調査する場合のデメリット
上記のようなメリットがある一方で、調査漏れに伴い大きなトラブルを招くリスクが高くなるなどのデメリットもあります。
以下の点も踏まえて、ご自身で対応するかどうかの検討進めましょう。
遺産分割のやり直しや親族間で揉めるリスクが大きい
遺産調査を自分で行う場合、専門的な知識や経験の不足から財産の見落としが発生するリスクがあります。特に不動産関係、デジタル資産、株式、事業用資産などは調査漏れや価格の評価が難しく、ミスが起こりやすいです。そしてミスがあるとその後の相続手続きに悪影響が及びます。
たとえば遺産分割協議が成立した後である財産の存在が明らかになった場合、協議をやり直すことになるかもしれません。
また遺産調査に基づく財産評価が誤っていることに後々気が付いた場合、取得した財産が少なく損をした相続人と揉める危険性もあります。
見落としによる借金の肩代わりのリスクが大きい
相続においては、「プラスの財産だけでなくマイナスの財産(負債)も相続の対象となる」という点にも注意が必要です。借金やローン、未払いの税金などの負債も漏れなく調査しなければなりませんが、被相続人がその存在について家族に知らせていなかったり隠していたりするケースもあるため、そうすると発覚が遅れてしまう可能性もあります。
多額の借金を見逃して相続してしまうと相続人が返済の肩代わりをしないといけなくなりますので、早めに把握して、場合によっては相続放棄の手続きも進める必要があるでしょう。プロが対応しないと発見ができなかったり発見が遅れたりするリスクが高くなります。
調査の手間が大きく時間もかかる
遺産の調査には手間と時間がかかります。被相続人が多種多様な財産を持っている場合ほどその作業量は多くなり、相続人の負担も重くなってきます。たとえば次のような作業が発生します。
- 相続人であることを証明するための戸籍謄本等の収集
- 金融機関での残高証明や取引履歴の取得
- 不動産登記簿謄本の取得や権利関係の確認
- 生命保険契約の確認
- 株式や投資信託などの金融商品の調査
- 貸金庫の内容確認
- 事業用資産がある場合はその調査
- クレジットカードや各種ローンの残債確認
- 税金の未納や還付金の有無の確認 など
加えて各種財産の価額評価にも対応しないといけません。遺産分割協議のための評価は相続人間の納得さえあれば自由な方法で評価をしてもかまいませんが、相続税申告については一定の方法で評価しなければならず、特に土地や非上場株式などは複雑な計算を要します。
仕事やほかの相続手続きと並行しながら作業を進めるのは大変ですし、調査が長期化すると相続税の申告期限に間に合わないリスクも生じます。
専門家活用の判断ポイント
遺産調査を自分で行うか専門家に依頼するかどうか、財産の内容や相続人の状況などその時々の状況に応じて判断しましょう。
- 自分で遺産調査を行うリスクが比較的小さいケース
- 預貯金や自宅など限られた財産のみであることが明らかで財産構成がシンプルな場合
- 被相続人の財産管理に生前から関わっており、おおむね資産状況を把握している場合
- 相続人が少人数で協力的な関係性にある場合
- 時間的余裕があり、自分で調査する労力を惜しまない場合
- 遺産や被相続人のこと、家族関係などの情報を一切外部に出したくない場合
- 専門家に依頼した方が良いケース
- 不動産が複数ある、株式や投資信託の種類が多いなど財産構成が複雑な場合
- 被相続人が個人事業主であった場合
- 相続税の申告が必要となる可能性がある場合
- 相続人間の関係性が良好とはいえない場合
- 相続人が多数いる、あるいは遠方に住んでいる相続人がいる場合
- 相続手続きを早く完了させたい場合
- 仕事等が忙しく調査に時間を割けない場合
- 過去に借金トラブルがあった場合など負債の存在が疑われる場合
- 海外にも財産がある、あるいは相続人が外国に住んでいる場合
また、完全に自分だけで行うか、すべて専門家に任せるかという二択ではなく、部分的に専門家を活用するという選択肢もあります。
Staff
資格者紹介

羽鳥 修平Hatori Shuhei / 第二東京弁護士会所属
ご挨拶にかえて
弁護士という仕事は、使命感を持っていそしむべき専門職(プロフェッション)なわけですが、その依頼者(クライアント)の求めにどう対処すべきかについては、二つの異なる考え方が有ると言われています。
ひとつは、「依頼者から具体的な求めがあったら、その求めに真正面から取り組み、そこにポイントを絞って、答えれば良い。それ以上のことをするのは、余計なことであって、弁護士を業とする者の立ち入るべき領域ではない。」という考え方で、もうひとつは、「依頼者から具体的な求めがあっても、それを鵜呑みにすべきではない。依頼者の具体的な求めは、依頼者が抱えている問題を知るための出発点として、注意深く聞くべきだが、そうした聞き取りを通して、依頼者にとって、本当に求めているものは何かを「見つけ出し」、それを依頼者に説明していくというプロセスを通して、依頼者のためにどのような法的サービスを提供すべきか決めるべきだ。」という考え方です。
私は、若い頃から、「見つけ出し」をしようとする癖のようなものがあり、先輩の弁護士から「余計な事をするな、そんなことに首を突っ込むのは弁護士の仕事ではない。」とたしなめられ、腑に落ちない気持ちを持つことが、よくありました。
その後、30年以上がたち、私も、多様なそしてそれなりの数の事案と向き合う機会を持ちました。そうした経験の積み重ねを通して、私は、やはり弁護士たる者、「見つけ出し」から出発することをこそ、重視していかなければならないと、ますます強く考えるようになってきました。
何か問題に直面しているのですか。どうすればよいか、一緒に考えましょう。どうぞ、お気軽にご相談においでください。
- 経歴
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- 昭和28年7月
- 東京都文京区生まれ。
- 昭和51年3月
- 東京大学経済学部を卒業、同大学院経済学研究科に進学。
- 昭和54年10月
- 司法試験に合格。
- 昭和57年3月
- 司法修習を終了。
- 昭和57年4月
- 第二東京弁護士会に登録。
アンダーソン・毛利・ラビノヴィッツ法律事務所に入所。 - 昭和61年1月
- 古田・羽鳥法律事務所に参加。
- 平成3年9月
- 独立して羽鳥法律事務所を開設。
Office Overview
事務所概要
| 名称 | 羽鳥法律事務所 |
|---|---|
| 資格者氏名 | 羽鳥 修平(はとり しゅうへい) |
| 所在地 | 〒113-0033 東京都文京区本郷3-6-9 エルデ本郷館3F |
| 連絡先 | TEL:03-3814-0527/FAX:03-3814-0537 |
| 受付時間 | 10:00~19:00 土日祝も対応可能(要予約) |
| アクセス | 東京メトロ丸の内線「本郷3丁目駅」より徒歩6分、「御茶ノ水駅」より徒歩6分 JR線「御茶ノ水駅」より徒歩8分 都営大江戸線「本郷3丁目駅」より徒歩6分 東京メトロ千代田線「新御茶ノ水駅」より徒歩10分 都営地下鉄三田線「水道橋駅」より徒歩11分 |

