数次相続とは?通常の相続との違い、相似相続との違いも併せて解説
家族が亡くなった際の相続手続きは、特に問題がないケースでも複雑で時間がかかるものです。しかし、遺産分割がまとまらないうちに別の相続人が亡くなってしまうと、「数次相続」という特殊な状況が発生し、手続きはさらに複雑化します。
本記事ではこの数次相続に言及し、通常の相続とはどう違うのか、また「相次相続」との違いなども解説していきます。
数次相続とは
数次相続(すうじそうぞく)とは、「ある方が亡くなって相続が始まったものの、その遺産分割協議がまとまらないうちに、相続人の中の誰かが亡くなってしまい新たな相続も始まる状況」を指します。
通常の相続では、被相続人(亡くなった人)の財産を相続人たちが話し合いによって分け合い、遺産分割協議書を作成して手続きを完了させます。しかし数次相続では、最初の相続(一次相続)の遺産分割が終わらないうちに次の相続(二次相続)が始まってしまうため、2つの相続が重なった状態となり、手続きが複雑になってしまうのです。
この状況では、二次相続で亡くなった人は「一次相続の相続人」と「二次相続の被相続人」という二重の立場に立つことになります。そのため、一次相続で受け取るはずだった財産の分割と、二次相続で分割すべき財産の整理を同時に行わなければならなくなります。
例)4人家族(父・母と長男・次男)で数次相続が起こる例 |
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父親が亡くなると、相続人は配偶者である母親、長男、長女の3人になる。この時点で一次相続が開始される。 父親の遺産について3人で遺産分割協議を進めていたところ、話し合いがまとまらないうちに母親も亡くなってしまったとする。すると、母親を被相続人とする二次相続が新たに開始される。 この状況を「数次相続」と呼ぶ。 |
数次相続が起こりやすいケース
数次相続は、次の状況下で起こりやすいといえます。
- 被相続人夫婦が高齢のケース
・・・特に高齢の夫婦の場合、相続手続きを進めている過程で妻または夫の体調が急変し、遺産分割が終わらないうちに亡くなってしまうリスクが比較的高い。 - 遺産分割協議を先送りにしているケース
・・・何らかの理由で遺産分割を先送りにしてしまい長期間放置していると、その間に相続人の1人が亡くなるリスクが高まる。「相続人同士の意見が対立して話し合いが進まない」「相続財産の評価が困難で時間がかかる」「相続人の一部と連絡が取れない」、あるいは単に怠慢で放置している場合などにも数次相続が起こり得る。
いずれのケースであっても、数次相続が発生すると手続きは複雑になってしまい、解決までにより多くの時間と労力を要してしまうでしょう。
相次相続との違い
数次相続と似た言葉に「相次相続」がありますが、これらは異なる概念です。
相次相続とは、相続税法上の用語で、「一次相続から10年以内に二次相続が発生すること」を指します。このとき短期間に同じ財産に対して2回相続税が課税されることから、税負担を軽減するための「相次相続控除」と呼ばれる制度が設けられているのです。
つまり、相次相続は相続税の計算に関する概念であり、遺産分割が完了しているかどうかは関係ありません。一方の数次相続は、遺産分割協議が未完了であることが前提となる手続き上の概念です。
数次相続の問題点
数次相続が発生することの問題点は、大きく分類して「財産関係が不明確になる」「相続手続きに要する時間が増える」次の2つが挙げられます。
財産関係が不明確になる
数次相続が発生すると、誰がどの財産を所有しているのかがわかりにくくなります。
一次相続における遺産の分配方法についての話し合いがついていないため、二次相続における被相続人がどの財産を相続したのかが確定していません。そのため、二次相続で分割すべき母親の財産の範囲も不明瞭で、財産関係がとても複雑になってしまいます。
さらに、関係者が増えることで意見の調整もより難易度が上がります。一次相続の当事者だけでなく二次相続の相続人も遺産分割協議に参加し、それぞれの利害関係が複雑に絡み合うためです。特に、普段あまり交流のない親族が協議に参加することになれば、話し合い自体が困難になるケースも珍しくありません。
手続きの完了までに時間がかかる
数次相続では、複数の相続手続きを同時に進めなければならないため、必要な書類の準備や手続きの流れも複雑化します。
戸籍謄本の取得一つをとっても、複数の相続に関わるすべての相続人を確定させる必要があり、通常の相続よりも多くの書類を集めなくてはなりません。
また、相続税の申告が必要な場合は、申告期限についても注意が必要です。一次相続の相続税申告義務は二次相続の相続人へとさらに引き継がれるため、場合によっては2つの相続に関する申告を同時に行わなければならなくなります。
数次相続発生後の対応のポイント
数次相続が発生すると遺産分割協議で揉める危険性も高まりますし、そうでなくとも手続きにかかる負担は大きく増してしまうでしょう。
トラブルなく進めるためには、まず「遺産分割協議に参加すべき人を正確に特定すること」に留意してください。一次相続の生存している相続人に加えて、二次相続の相続人も協議に参加することになります。
その後、遺産分割協議を行うことができればその結果を遺産分割協議書にまとめることになります。その際、「一次相続と二次相続における協議書を別々に作成すること」にも注意しましょう。一次相続と二次相続を一つの協議書にまとめることも可能ですが、混乱を避けるためには、それぞれ別々の協議書を作成することが推奨されます。
もし数次相続への対応が難しいと思われるなら、お早めに弁護士へご相談ください。相続人間で揉めてしまったときや、遺産分割の方法についてアドバイスがほしいというときにも、弁護士のサポートを受けられます。
Staff
資格者紹介

羽鳥 修平Hatori Shuhei / 第二東京弁護士会所属
ご挨拶にかえて
弁護士という仕事は、使命感を持っていそしむべき専門職(プロフェッション)なわけですが、その依頼者(クライアント)の求めにどう対処すべきかについては、二つの異なる考え方が有ると言われています。
ひとつは、「依頼者から具体的な求めがあったら、その求めに真正面から取り組み、そこにポイントを絞って、答えれば良い。それ以上のことをするのは、余計なことであって、弁護士を業とする者の立ち入るべき領域ではない。」という考え方で、もうひとつは、「依頼者から具体的な求めがあっても、それを鵜呑みにすべきではない。依頼者の具体的な求めは、依頼者が抱えている問題を知るための出発点として、注意深く聞くべきだが、そうした聞き取りを通して、依頼者にとって、本当に求めているものは何かを「見つけ出し」、それを依頼者に説明していくというプロセスを通して、依頼者のためにどのような法的サービスを提供すべきか決めるべきだ。」という考え方です。
私は、若い頃から、「見つけ出し」をしようとする癖のようなものがあり、先輩の弁護士から「余計な事をするな、そんなことに首を突っ込むのは弁護士の仕事ではない。」とたしなめられ、腑に落ちない気持ちを持つことが、よくありました。
その後、30年以上がたち、私も、多様なそしてそれなりの数の事案と向き合う機会を持ちました。そうした経験の積み重ねを通して、私は、やはり弁護士たる者、「見つけ出し」から出発することをこそ、重視していかなければならないと、ますます強く考えるようになってきました。
何か問題に直面しているのですか。どうすればよいか、一緒に考えましょう。どうぞ、お気軽にご相談においでください。
- 経歴
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- 昭和28年7月
- 東京都文京区生まれ。
- 昭和51年3月
- 東京大学経済学部を卒業、同大学院経済学研究科に進学。
- 昭和54年10月
- 司法試験に合格。
- 昭和57年3月
- 司法修習を終了。
- 昭和57年4月
- 第二東京弁護士会に登録。
アンダーソン・毛利・ラビノヴィッツ法律事務所に入所。 - 昭和61年1月
- 古田・羽鳥法律事務所に参加。
- 平成3年9月
- 独立して羽鳥法律事務所を開設。
Office Overview
事務所概要
| 名称 | 羽鳥法律事務所 |
|---|---|
| 資格者氏名 | 羽鳥 修平(はとり しゅうへい) |
| 所在地 | 〒113-0033 東京都文京区本郷3-6-9 エルデ本郷館3F |
| 連絡先 | TEL:03-3814-0527/FAX:03-3814-0537 |
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