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相続人に子ども(未成年)がいるときの手続きで注意すべきこととは

相続人の中に18歳未満の子どもがいる場合、成人とは異なる特別な配慮が必要です。未成年者は法的に保護されていることとの関係で、手続きが複雑化することがあるためです。

具体的にどう複雑化するのか、親やほかの相続人としては何に注意しなくてはならないのか、ここで解説していきます。

 

未成年者にも相続権はある

 

18歳未満の未成年者でも、成人と同じように相続する権利を持ちます。相続開始時点で生まれていない胎児ですら、生きて生まれてくれば相続人として扱われることが法定されているのです。

 

しかし、未成年者が自ら権利を行使する際、制約がかかるケースがあるということは知っておきましょう。未成年者を保護するための仕組みとして設けられていますが、この仕組みが円滑な相続手続きを阻害する要因にもなり得ます。

 

単独で法律行為ができない

 

民法第5条では、未成年者が法律行為を行うことに対して制約を設けています。

 

(未成年者の法律行為)
第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。

引用:e-Gov法令検索 民法第5条第1項・第2項

 

「法律行為」に該当する行為は幅広いです。相続に関してもたとえば次の行為は法律行為に該当しますので、未成年者が単独で意思決定しても有効にならない可能性があります。

 

  • 遺産分割に対する同意
  • 相続の承認(単純承認・限定承認)の意思表示
  • 相続放棄の申述
  • 相続財産の処分
  • 預貯金の解約や名義変更 など

 

これらの行為を未成年者が単独で行っても、後から取り消される可能性があり、そうすると相続手続き全体に影響を及ぼすことになります。そのため適切な代理人を通じて手続きを進めなくてはなりません。

 

相続手続きには法定代理人が必要

 

第一に「親権者(通常は親)」が未成年者の法定代理人となり、もし親権者がいなければ家庭裁判所で選任される「未成年後見人」が法定代理人として本人を法的に支援します。

※離婚により親権者が1人でも問題なく代理権を行使できる。

 

もし親が法定代理人となる場合、原則として相続手続きを親が代わりに行うこととなります。

 

たとえば「相続の承認」や「相続放棄」、「遺産分割協議」、遺産分割後の「相続登記などを含む、各財産の名義変更手続き」等に対応します。「相続財産の調査」や「財産目録の作成」、「金融機関への照会」などの事実行為もこれらに附随して親が対応することになるでしょう。

 

ただし、法定代理人であっても無制限に代理権を行使できるわけではありません。未成年者の利益に反する行為は許されませんし、後述の「利益相反行為」に該当する場合は親が代理することができません。

 

親との共同相続では特別代理人が必要

 

未成年の子どもとその法定代理人にあたる親が共同で相続するケースには注意してください。

 

たとえば、父親が亡くなり、母親と未成年の子どもが相続人となるケースです。このとき、母親は自分自身の相続人としての立場と、子どもの法定代理人としての立場を同時に持つことになります。

※その他の例-①複数の未成年の子どもがいて、親が全員を代理しようとするケース、②親は相続を承認するが子どもには相続放棄をさせるケース、③遺産分割後、代償分割で親が不動産を取得し子どもに代償金を支払うケース、など。

 

この状況での遺産分割協議は、自身の権利と子どもの権利が相反することになり、自分だけが得をするような遺産分割もやろうと思えばできてしまいます。

 

適切に遺産分割を行うという意思があったとしても、客観的には利益相反行為ということになるため、このケースでは「特別代理人」を選任してもらわないといけません。

 

(利益相反行為)
第八百二十六条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

引用:e-Gov法令検索 民法第826条第1項

 

このように法定されており、具体的には家庭裁判所での手続きが必要となります。

 

特別代理人は未成年者の利益を優先的に考える

 

特別代理人の役割は「未成年者の利益を守ること」にあります。

 

そのため、親やほかの相続人の意向があったとしても、未成年者に不利な内容で遺産分割協議をまとめることは原則としてできません。

 

そこで基本的に特別代理人は未成年者の法定相続分を確保する方向で協議に臨むでしょう。配偶者と子ども2人が相続人だとすれば、子ども1人あたりの法定相続分は全体の1/4ですので、この割合を下回る内容での分割に同意することは通常ありません。

 

ただし、未成年者の将来の生活や教育を総合的に考慮し、結果的に法定相続分と異なる割合で協議がまとまる可能性はあるでしょう。

 

とはいえ「今は親が全部相続して、将来子どもに渡す」などと口約束で解決できるものではありません。法定相続分を下回る形で分割する必要があるなら、それが子どもにとって合理的な利益となることを立証するなど、説得的に伝える必要があります。

Staff

資格者紹介

羽鳥 修平

羽鳥 修平Hatori Shuhei / 第二東京弁護士会所属

ご挨拶にかえて

弁護士という仕事は、使命感を持っていそしむべき専門職(プロフェッション)なわけですが、その依頼者(クライアント)の求めにどう対処すべきかについては、二つの異なる考え方が有ると言われています。

ひとつは、「依頼者から具体的な求めがあったら、その求めに真正面から取り組み、そこにポイントを絞って、答えれば良い。それ以上のことをするのは、余計なことであって、弁護士を業とする者の立ち入るべき領域ではない。」という考え方で、もうひとつは、「依頼者から具体的な求めがあっても、それを鵜呑みにすべきではない。依頼者の具体的な求めは、依頼者が抱えている問題を知るための出発点として、注意深く聞くべきだが、そうした聞き取りを通して、依頼者にとって、本当に求めているものは何かを「見つけ出し」、それを依頼者に説明していくというプロセスを通して、依頼者のためにどのような法的サービスを提供すべきか決めるべきだ。」という考え方です。

私は、若い頃から、「見つけ出し」をしようとする癖のようなものがあり、先輩の弁護士から「余計な事をするな、そんなことに首を突っ込むのは弁護士の仕事ではない。」とたしなめられ、腑に落ちない気持ちを持つことが、よくありました。

その後、30年以上がたち、私も、多様なそしてそれなりの数の事案と向き合う機会を持ちました。そうした経験の積み重ねを通して、私は、やはり弁護士たる者、「見つけ出し」から出発することをこそ、重視していかなければならないと、ますます強く考えるようになってきました。

何か問題に直面しているのですか。どうすればよいか、一緒に考えましょう。どうぞ、お気軽にご相談においでください。

経歴
昭和28年7月
東京都文京区生まれ。
昭和51年3月
東京大学経済学部を卒業、同大学院経済学研究科に進学。
昭和54年10月
司法試験に合格。
昭和57年3月
司法修習を終了。
昭和57年4月
第二東京弁護士会に登録。
アンダーソン・毛利・ラビノヴィッツ法律事務所に入所。
昭和61年1月
古田・羽鳥法律事務所に参加。
平成3年9月
独立して羽鳥法律事務所を開設。

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事務所概要

名称 羽鳥法律事務所
資格者氏名 羽鳥 修平(はとり しゅうへい)
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